本研究は、4つの基本相互作用のうち、最も実験的、理論的研究と理解の遅れている重力相互作用に関するものである。ニュートンの万有引力の法則は天体の運行を見事に説明した近代科学の金字塔であるが、その極端な弱さから素粒子スケールはもちろん実験室スケールでも精密検証がなされていない。一方で、4次元を超える時空を要請する理論によればそのような近距離での逆二乗則のやぶれが予言されている。本研究は、天体の運行と同様に、宇宙環境の小物体の運動を観測する事によって地上実験では困難な精度で近距離での逆二乗則の検証実験を行う事を目指している。その測定原理検証を行うため、ねじれ秤を用いた近距離重力観測装置を本研究において新たに立教大学原子力研究所内に建設し、ハイビジョン撮像システムの新規開発を含めた全システムの構築を行った。これまでの近距離重力実験は全て弾性体の復元力を利用した計測原理に基づいて行われてきたが、本研究では無重力空間の特性を活かせる、運動の時間発展計測による新しい計測原理を試行する事を目指している。平成20年度には、本装置を用いた重力の観測に成功し、原理検証を完了させることができた。同一設定で重力の距離依存性を同時に計測する事が出来、系統誤差を従来の方法に比べて大きく抑制することに成功した。平成21年度には、本装置を発展させたシステムで計測を行い、最近接距離における最高精度の検証データを取得、成果発表を行う予定である。
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