本研究は、4つの基本相互作用のうち、最も実験的、理論的研究と理解の遅れている重力相互作用に関するものである。ニュートンの万有引力の法則は天体の運行を見事に説明した近代科学の金字塔であるが、その極端な弱さから素粒子スケールはもちろん実験室スケールでも精密検証がなされていない。一方で、4次元を超える時空を要請する理論によればそのような近距離での逆二乗則のやぶれが予言されている。本研究は、天体の運行と同様に、宇宙環境の小物体の運動を観測する事によって地上実験では困難な精度で近距離での逆二乗則の検証実験を行う事を目指している。本研究二年目となる本年度には、ねじれ秤を用いた主として三種類の測定原理検証を行い、いずれも成功させる事が出来た。まず、これまで行ってきた角度変位計測法を、低速で重力源を変位させる事による追随計測法に成功し、極めて高精度で逆二乗則と等価原理検証を行う事が出来た。また、宇宙実験において鍵となる加速度計測法に基づく、ヌル実験も開始し、ミクロンスケールでの実験を始める事が出来た。加えて、重力波研究のアイデアを流用した強制振動方式によるヌル実験も行った。これらの実験研究に加え、加速度計測法における誤差解析の理論研究を行い、宇宙実験の物理感度を宇宙ステーションの振動レベルの関数として求める事に成功した。その結果を受けて、地上実験を上回る感度を達成する手法を考案し、「きぼう」船内実験室第二期後半期間の実験提案を行うという本研究の最終目標を達成する事が出来た。
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