本研究は、ミリ波帯電磁波を利用した超高電界加速器の検討を目的としている。加速電磁波は数ミリの波長だが、光学的手法を用いる事で、加速管の外形としては従来の加速管程度の数cmという大きさになる事を前提としている。光学的手法によるミリ波帯加速管としては、様々な形状が考えられるが、ラグビーボール型はミリ波帯の加速管として非常に良い候補であると考えており、この空洞の試験を行っている。空洞は波長に比べて非常に大きいため、従来の基本モードの空洞に比べるとシミュレーションに大量の演算と記憶領域が必要である。従って3次元での電磁波計算を複数のPCによる並列計算を用いて、共振器のQ値や、ビームによる誘起波の検討をさらに進めた。 さらに前年度製作・低電力測定を行ったラグビーボール空洞の電子ビームを使った試験を行うため、空洞を設置できる真空チェンバーを製作した。空洞内を走行する電子ビームについては、空洞内で電子ビームが絞れるよう、収束磁石による光学系を設置し、さらに空洞の共振周波数と同期してビームを制御できるようにし、これらの調整を行った。 また、ミリ波を蓄積・制御するデバイスとして近年光学分野で研究が盛んなフォトニック構造は非常に有効であり、これらを利用した空洞等のシミュレーションによる検討を継続している。ミリ波帯ではフォトニック構造による共振空洞もエッチングや3次元造形などで容易に製造可能であり、これらの製造技術の検討を行い、簡易な構造体を製作して低電力測定を行っている。
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