高い精度で生物化学溶液発光の絶対定量分光計測を行うための技術装置開発を進め、量子収率の評価や、種の異なる生物など様々な発光酵素にまたがった発光スペクトルの直接比較を行えるようにし、古くから関心の的でありながら未だ理解されていない、ホタル生物発光の発光色決定機構の解明に迫ることが本研究の目的である。 産業技術総合研究所・光放射標準グループによって国家標準トレーサブル校正が行われたフォトダイオードと、併せてダングステンランプおよび干渉フィルターを用いた光源を用いて校正を行い、0.29%の集光効率と約5.7%の分光器透過率を経てCCD検出器で19フォトン/カウントの絶対感度で生物発光絶対量分光計が行えるようになった。 天然北米産ホタルの精製ルシフェラーゼを用いて、ホタル生物発光の量子収率計測のpH依存性と温度依存性の実験を行い、我々自身による過去の測定値41.0±7.4%に近い、47.1±6.5%という値を得た。 天然北米産ホタルの精製ルシフェラーゼを用いて、通常のMgの代わりに、Zn、Cd、Ni、Co、Ca、Mnなどの金属イオンを付加したことによるスペクトル変化の定量計測を行った。Ca、Mnでは、Mgの場合と同様に色変化は起きなかったが、Zn、Cd、Ni、Coを添加した場合には、pH依存性の結果と同様に、緑側の発光成分の量のみが金属イオン量に応じて変化し、赤側の発光成分は変化しないという兆候が見られた。また、発光スペクトルが、1.85eV、2.0eV、2.2eVにピークをもつ3つのガウス型ピークに分解する解析が可能であることもわかっているので、発光スペクトルをピーク強度、位置、幅の3つのパラメータとして数値化して整理し、金属イオン依存性を定量的にプロットした。色変化の感度の大小は、Mg、Ca、Mn<Co、Ni<Zn、Cdのような序列に従っていることがはじめて明らかになった。
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