高強度レーザーショックでのみ実現する物質極限環境において、最も単純な“ユゴニオ状態"から外れた極限環境を生成するための静動ハイブリッド圧縮法の開発と原理実証を目指して、平成20年度に以下のような研究を行った。 ナノ秒のパルスレーザーが誘起する衝撃波は、従来の動的方法に比べて持続時間が短いので、いわゆる“アンビル"型のダイヤモンドでは厚すぎて衝撃圧力を内部のサンプルセルに伝えることができない。そこでアンビル型ではなく、数100ミクロン厚程度の板状のダイヤモンドで挟み込んだDACを新たに設計し製作した。また、生成された状態を容易に理解するためには平面衝撃波による一軸圧縮を行う必要がある。そのため、圧縮セルの開口は従来のDACに比べて極めて広くしなければならない。 一般的なDACにおいて10GPa以上の圧力を得る際には、ステンレスのような硬い材質をガスケットとして選択する。しかしながら、ここでのスキームで到達し得るであろう圧力領域(〈10GPa)の場合は、ガスケットが十分潰れる前にダイヤモンドの破壊が起きてしまう。そこで、本研究ではまず新しいセルに対するガスケット材の最適化を行った。りん青銅をガスケットに用いた場合と、通常のステンレスガスケットの場合との比較から、りん青銅ガスケットを用いた際の圧力が、ステンレスの場合の2-3倍高いことが再現性よく示された。ガスケット材の強度を変数に含んだmaximum loadingの定式化を行った。また、りん青銅を用いたハイブリッド法によって予備圧縮した水に、高強度レーザー照射による衝撃波を駆動して、放射輝度温度計による温度計測予備実験を行い成功した。
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