研究概要 |
平成21年度は,チャート試料からみつかった宇宙塵について,(1)微化石に基づく堆積年代の決定,(2)電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)による化学組成の定量分析を行った.これらの実験に加え本年度は,九州大学大学院理学府の中村智樹博士の協力を得て,高エネルギー加速器研究機構のビームライン3Aを用いて,(3)宇宙塵の放射光X線回折分析(XRD)を行った. 研究の結果,秩父帯の中部トリアス系チャートからは152個の溶融宇宙塵(スフェルール)と2個の非溶融宇宙塵を発見した.このうち特にコンドライト的な組成を持つ石質スフェルールと非溶融宇宙塵は,これまで堆積岩から知られている宇宙塵のうち最古のものである.これらの宇宙塵について,EPMAによる化学組成分析をおこなった結果,南極氷床から報告されているスフェルールによく比較できることが明らかになった.放射光XRDの分析結果からは,みつかったスフェルールが,かんらん石,カルシウムに乏しい輝石,ウスタイト,鉄-ニッケル金属などの宇宙塵に特徴的な鉱物組成を持つことが明らかになった.また微化石年代から決定した堆積速度とチャート試料中のスフェルール含有量をもとに,今から2億4千万年前の地球に降下した鉄質スフェルールのフラックスを求めた結果,760±140ton/yearと現在とそれほど変わらないことが明らかになった.しかしこの時期に地球に流入したスフェルールは,現在のものに比べて約1/3から1/4と小さいため,大気圏突入時の速度が大きく蒸発量が多かかったと考えられる.
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