研究概要 |
これまでの我々の実績よりも,さらに高圧力でのNMR測定を実現することで,地球惑星物質中の水素のダイナミクスに関する現象を新たに発見することが本研究の目的である。具体的には圧力5GPa以上において,信号強度の減少や,穿孔したダイヤモンドアンビルの強度の減少を補う形での新しい測定を行うことが課題である。そのテストケースとして,今年度はプルーサイト・Mg(OH)2の1Hの高分解能NMR測定を行った。この物質を選んだ理由は以下の通りである:(1)硬い固体であって非金属のガスケットによる封入が有効なので信号強度の増加が期待できる。(2)水素結合対称化の圧力が比較的低いために,水素まわりの局所環境の状態変化に関連する相転移現象が予測されている。(3)1H間の双極子相互作用が比較的小さく,スペクトル幅があまり大きくならない。つまり我々がこれまで主として測定してきた氷関連物質と比較して,試料封入,測定,および結果の解析のいずれもがより容易に行えると判断された。この物質に対して繰り返し行った測定試験の結果,今年度は圧力約7GPaまでの測定を行うことができた。キュレット径を比較的大きく0.6mm程度に取ることで、試料容積の減少を最小限度に抑え、1H濃度が低い問題を補償した。この状態の試料圧縮するために必要な荷重は,これまでに開発した非磁性DACの能力の範囲内で問題なく発生することができた。なお測定の補助のために,励起パルスとプリアンプを能動的に切り替える高周波スイッチを製作して応用した。
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