本研究では、試料に含まれる有機物全体に対して、特定の分子内の官能基に対して標識誘導体化法を適用し、観測核種すべてが分析対象となる1次元及び2次元-同核・異核-核磁気共鳴スペクトル法で修飾官能基を検出して、海洋溶存態有機物の化学像をあぶり出すことを試みる。研究目的は、以下に示す。 誘導体化法と核磁気共鳴法を組み合わせて、存在量のおよそ90%が、化学的未同定である海洋の溶存態有機物を分子レベル(官能基組成)で詳細に把握し、熱力学的解析(分子運動及び分子間相互作用)で海水中での動的挙動を推定することで、海洋における溶存態有機物の分解・残存メカニズムを明らかにする。 本年度は、21年度に得られた脱塩・濃縮試料に対し、蛍光誘導体化法と電気泳動法を組み合わせた分析法を適用し、溶存有機物中に2糖から23糖までの複合糖質が存在していることが分かった。これらの糖鎖について、糖組成分析を試みたが、ごく微量であるため、詳細な結果を得るには至らなかった。
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