本研究では小惑星の表面年代(天体そのものの形成年代ではなく、天体の現在の表面が形成された年代)を決定する新しい方法を試行する。これまでの表面年代の決定法とは全く異なる原理を用いる。具体的には、小惑星の表層から飛来した隕石の反射スペクトルと希ガス同位体分析を行い、小惑星表層の"宇宙風化作用"による反射スペクトルの変化を百万年刻みで推定する。これらのデータから、反射スペクトルの観測データがある多数の小惑星の表面年代を求める。小惑星帯の形成進化過程を解明する端緒とする。 小惑星表層起源隕石であるDubrovnik普通コンドライト隕石に対し、白い部分と灰色の部分の反射スペクトル(非破壊分析)を測定した。その結果、両者に明確な違いが得られた。灰色部分を詳細にスペクトル解析し、希ガス含有量との相関を調べた。その結果、両者に明確な相関は得られなかった。原因としては、反射スペクトルを隕石刃断面で測定しているため、試料表面のみの反射スペクトルになってしまい、試料表面とその内部を包括して得られる希ガス同位体分析結果と整合性が取れないためであると考えられる。今後は、フリーズソー法を用い、太陽風照射を受けている灰色部分を微粒子単位に分解し、その反射スペクトル測定し、その試料の希ガス同位体分析を行うことにより、太陽風照射程度と反射スペクトルの赤化度の相関関係を調べる予定である。
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