本研究では、軸性キラル分子イソプロピルアルコール分子の内部回転運動によって混合している状態を利用して、赤外線照射、低温体への付着を行い、D体とL体の分離を試みることにより、ホモキラリティーの起源との関連を探ることを目的とする。L体とD体は鏡像関係にあるので、反転運動によって相互に変換することができる。しかしながらアラニンなどではその反転運動のバリアーは高く簡単には変換しないため、別の分子として存在できる。一方、'軸性キラル'として知られる分子では変換のバリアーは低くなる場合がある。例としてイソプロパノール(CH3)2CHOHが研究されている。その分子のgauche formではD体とL体の交じり合いの結果、アンモニアのような反転分裂が観測されている。そのような準位からL体の性質をよく保有している状態へ赤外線を照射することにより遷移を起こさせ、それを固定すれば、最終的にはL体の濃縮につながる。 本年度、研究の第一ステップとしてイソプロピルアルコールの振動回転準位を詳しく調べる実験を行った。これまで、低分解能のスペクトルは測定されているが高分解能スペクトルは報告されていない。高分解能フーリエ分光器を用いて測定を行ったが非常に複雑なスペクトルが観測された。連続分子線で試みたが、弱くて観測できなかった。パルスノズルでの実験が必要であると結論し、PZTを用いた高速繰り返しノズルを製作した。それを用いた実験が進行中である。
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