研究課題/領域番号 |
20655004
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
川口 建太郎 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (40158861)
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研究分担者 |
唐 健 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (40379706)
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キーワード | キラル化合物の赤外分光 / 時間分解フーリエ変換型分光 / 高分解能分光 / OPOレーザー / 赤外励起 |
研究概要 |
L体とD体は鏡像関係にあるので、反転運動によって相互に変換することができる。しかしながらアラニンなどではその反転運動のバリアーは高く簡単には変換しないため、別の分子として存在できる。一方、'軸性キラル'として知られる分子では変換のバリアーは低くなる場合がある。例としてイソプロパノール(CH3)2CHOHが研究されている。その分子のgauche formではD体とL体の交じり合いの結果、アンモニアのような反転分裂が観測されている。そのような準位からL体の性質をよく保有している状態へ赤外線を照射することにより遷移を起こさせ、それを固定すれば、最終的にはL体の濃縮につながる。 今年度、赤外線励起用光源としての利用、及び高感度分光用光源として速続発振型赤外OPOレーザーを整備した。OPOレーザーは波長1ミクロンのシードレーザー光をファイバーアンプで最大20Wまで増幅し、LiNbO3の結晶に照射した。タイ型共振器を調整し、波長3ミクロンのアイドラー光、波長1.6ミクロンのシグナル光を得た。ポンプパワー5Wでアイドラー光の出力600mWがえられた。ポンプパワーを増大すればより大きな出力が得られるので、通常の振動回転遷移の励起には十分である。またこのOPOレーザーは分子の振動回転スペクトルの実時間測定にも応用できることを確認した。その場合は、PZTによりシードレーザー光の波長を変化させ、シグナル光を固定しておけば、アイドラー光の波長が変化する。すなわち周波数にして約100GHzを200VのPZTの電圧変化で掃引できた。この掃引を速くおこなえばオシロスコープ上で吸収スペクトル線とエタロンの干渉波形を同時に観測、記録することができた。新しい分光システムの感度を見積もっているところであるが、フーリエ変換型分光器にくらべて一桁以上の感度上昇が期待できている。これまでの研究により、分子ビームでの低温分子の測定、赤外励起によるL体、D体の分離へ適用できるようになった。
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