本研究は、独立に波長の掃引が可能な複数のパルス光を発振するマルチカラー同時発振レーザーを開発し、このレーザーシステムを活用することにより、分子の量子固有状態分布や位相関係までも精密に制御した分子内反応ダイナミックス研究へ展開することを目指すものである。マルチカラーレーザーとしては、研究室で開発を進めてきた単一モードcw半導体レーザー光によってインジェクションシードしたパラメトリック発振・増幅(OPA)を利用し、シード光を複数とすることによりマルチカラー化を実現することを計画した。本年度は、シグナルおよびアイドラー光ともに1.05μm付近を発振するOPAシステムの開発を行った。本OPAでは、光発生効率やビームポインティング安定性などを考慮して、BiBO結晶を用いたYAGレーザー2倍波励起を採用している。このシステム単独で、シグナルとアイドラーの2色の出力光を用いて誘導ラマン過程を行う。特に、シード光を適切に位相変調することにより40GHz程度までのサイドバンドを発生することができるので、励起レーザーパルスと適切に同期を取ることにより、周波数チャープしたナノ秒パルスを得ることができる。このようなチャープパルスを利用して断熱ラマン通過を行うと、非共鳴の条件でありほぼ100%状態分布移動が実現可能である。OPAを安定にシードするためには、半導体レーザーの出力を増幅する必要があり、このためのファイバーアンプの実装などを行った。
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