研究概要 |
光照射に伴うmRNAからタンパク質への翻訳が制御出来るかどうか検討した.その結果,光照射に伴うルシフェラーゼの発光量は最大1.5倍程度であることが解った.この変化量は実際にoxo-G形成に伴うものであるかを確認するため,oxo-G抗体を利用してRNA blottingをおこなった.その結果,oxo-G抗体の産生は,光照射前後で有意な変化が観測されなかった.そこでプローブの開発原理から再度検討し直し,光制御可能なmRNA翻訳制御系の開発を目指した.具体的には,mRNAからタンパク質の翻訳を調整するタンパク質IRP2を利用した光制御法を開発した.IRP2は,Feの酸化に伴いRNの翻訳を制御するタンパク質である.そこでIRP2に活性酸素を発するKillarRedタンパク質を結合して,光照射に伴うFeの酸化および翻訳制御を可能にする.IPR2-KillarRed融合タンパク質の作製,IRP2の翻訳調節領域を含むルシフェラーゼレポーターの作製を行った.プローブとレポーターを培養細胞に発現させ,光照射に伴うルシフェラーゼ発光値上昇を調べた.その結果,バックグラウンド発光に対し,光照射により1.3倍の発光値上昇を示した.さらに単一細胞レベルでの光照射に伴う発光値変化を調べた.光照射30分後からディッシュ上の幾つかの細胞で発光値の顕著な増大が観察された.現在,遺伝子導入量にばらつきの少ない安定発現細胞株を作製し,S/N比の向上を目指している.将来的には,RNAレベルでタンパク質翻訳系を光制御できる新たな方法が期待できる.
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