本研究では、フラグメント化を抑制した高感度分析法になると期待される"インパルシブイオン化法"による爆発物の新規検出法実現に関する研究を行った。 1. 深紫外(266nm)フェムト秒レーザーをイオン化源としたガスクロマトグラフィー/多光子イオン化/飛行時間型質量分析法を用いて、自爆テロ等で用いられる有機過酸化物の一種トリアセトントリペルオキシド(TATP)の計測を実施した。分子イオンと2つのフラグメントイオンの検出限界はそれぞれ67 0pg、83pg、150pgであった。また、分子ビーム軸上でレーザー強度を変化させることによって、フラグメントの発生過程を解析した。その結果、分子イオンとフラグメントイオンの比がレーザー強度の増加に伴って減少することを明らかにした。 2. インパルシブイオン化用光源とするための10fs時間幅深紫外超短パルスを発生させるために、新しく発案した光ビート励起分子位相変調法を適用した。得られる深紫外超短パルスのエネルギー向上させるために光学系の改良を行い、スペクトル拡張後にこれまでの5倍のエネルギーを得ることに成功した。これによって、深紫外超短パルスのインパルシブイオン化での使用に十分なエネルギーを確保した。また、これまでで最大となる帯域のスペクトル拡張に成功した。この深紫外超短パルスを計測するための自己回折型周波数分解ゲート法(SD-FROG)装置と可変系鏡を用いたパルス圧縮光学系を構築し、深紫外超短パルス光の時間波形測定に成功した。
|