本研究は脂質膜に結合する生体試料を対象として、その試料状態を変調する外部摂動を適用するプローブを製作し、そのプローブを有効活用するための測定法および解析法の開発を行うことを目的とした。 プローブは静止試料を対象とした精密な温度調節機能を持つプローブの開発を行った。完全独自設計のプローブでは回路構成の変更を何度か行ったため、観測核の周波数を固定にした。このため、観測核を可変にする目的で市販のマジックアングルスピニング(MAS)プローブを改造し、独自設計のプローブヘッドに入れ替えた精密な温度制御が可能な静止試料プローブの開発も行った。プローブの製作が大幅に遅れたため、試料変調を行う部分に関しては独立モジュールで実験を行い、期間内には目的のプローブの試作品の完成に至った。最終調整を行い、今後NMR測定を行う。 プローブ製作と平行して、上記の必要な試料調製技術の開発を行った。試料は自発磁場配向する試料を前提としたため、室温以下で安定的な自発磁場配向を可能にする新たな脂質組成のバイセルの開発を行い、これに成功し特許の出願を行った。また、脂質膜表面に結合してホスフォリパーゼCδ1(PLC-δ1)の脂質結合部位であるPHドメインの脂質膜局率に依存した構造変化に関する固体NMRを用いた研究を行った。さらに、配向試料を対象とした感度増強を目的とした新規分極移動法の開発に成功した。
|