研究概要 |
高分子ゲル空間内に分子構造情報を記憶させ,その情報をゲル構造変化として読み出すことができる「分子情報記憶ゲル」を創製するために,(i)生体分子情報を記憶させた高分子ゲルの創製,(ii)環境関連分子情報を記憶させた高分子ゲルの創製を検討し,現在までに以下のような成果が得られた。 i)生体分子情報を記憶させた高分子ゲルの創製 分子インプリント法に用いる鋳型としてタンパク質(標的タンパク質)を用い,リガンドモノマーをこれと相互作用させた状態で架橋剤モノマーと共重合することによって,タンパク質インプリントゲルを合成した。次に,標的タンパク質の構造情報に対するタンパク質インプリントゲルの記憶状態を検討するため,標的タンパク質のゲルへの吸着量を測定した。その結果,タンパク質インプリントゲルとノンインプリントゲルへの標的タンパク質の吸着量に大きな差異は認められなかった。さらに,高分子ゲルに標的タンパク質の構造を記憶させるための最適なゲル合成条件を検討中である。 ii)環境関連分子情報を記憶させた高分子ゲルの創製 環境関連分子として内分泌攪乱化学物質の疑いのあるビスフェノールA(BPA)を取り上げ,その二つの芳香環を認識するリガンドとしてシクロデキストリン(CD)を用いた分子インプリント法により,高分子ゲル空間内にBPAの分子構造情報を記憶させることを試みた。BPAの構造情報に対するBPAインプリントゲルの記憶状態を検討するため,BPAおよびそれと類似構造を有する分子のゲルへの吸着量を測定した。その結果,ノンインプリントゲルに比較してBPAインプリントゲルの方がより多くのBPAを吸着した。さらに,BPAインプリントゲルの構造とBPAの吸着挙動との関係を検討中である。
|