研究概要 |
軟磁性相および硬磁性相からなる交換結合ナノコンポジット磁石は、従来の単相磁石より大きなエネルギー積を有する永久磁石であり、電気自動車用モーターへの搭載など応用分野は極めて広い重要な先進材料である。交換結合ナノコンポジット磁石創成の重要な点は、高い飽和磁化を示す軟磁性相と高い保磁力を示す硬磁性相間に効果的な交換結合相互作用を発現するため、バルク内で両相の大きさ、空間配置をナノスケールで制御することである。本年度はまず、粒径5〜10nmの単分散Pdナノ粒子を種としPdナノ粒子表面にγ一Fe203相(Fe1Pd=9/1〜515,mol/mol)をヘテロ接合させた異方性相分離Pd/γ一Fe203ヘテロ接合ナノ粒子の大量合成について検討した。結果として、粒径5〜8nmのトリオクチルボスフィン保護Pdナノ粒子の合成に成功し、これを鉄(III)アセチルアセトナト錯体とともにオレイン酸、オレイルアミン存在下、1一オクタノール中で還流することにより、Pd表面に1〜3個のγ一Fe203相をエピタキシャル成長したPd1γ一Fe2O3ヘテロ接合ナノ粒子(Fe1Pd=812〜515,mol/mol)を得ることに成功した。 収量は、〜100mg/バッチを達成した。次に、5nm Pdコアを有するPd/γ一Fe2O3ヘテロ接合ナノ粒子(Fe1Pd=812,mol/mol)に5nm Pdナノ粒子を混合することにより、Fe1Pd体積比を8/2〜515で調整した試料を、還元雰囲気(Ar+4%H2)下、熱処理温度450〜600℃にて熱処理したところ、いずれの試料もfct-FePd/α一Feナノコンポジット磁石へ構造変態し、さらに極めて高い最大エネルギー積(>10MGOe)が発現する熱処理条件を見出すことに成功した。
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