ルベアン酸、パイ拡張ルベアン酸を含む試料について、基板の平滑性が結晶性にどのように影響を与えるのかについての知見を得るために、超平坦サファイア基板からガラス基板に変えて、実験を行った。 in-plane測定を試みたが、サファイア基板の時のように鋭い回折ピークが観察されず、ルベアン酸銅が配列していないことがわかった。結晶性の配位高分子材料を基板上に作製するには、用いる配位子の対称性と基板の平滑性が重要な要素となっていることが明らかとなった。すなわち、結晶性の膜を得る少なくとも2つの条件が導き出された。1つ目は対称性の分子を用いることである。対称・非対称性を含む3種類の分子を用いて実験を行ない、対称性分子を用いた場合は面内に顕著に原子が配列したのに対し、非対称分子を用いた場合には配列しなかった。2つ目は、原子レベルでの平坦な基板を用いることである。超平坦サファイアを基板として用いた場合のみ、3次元的な原子配列構造の試料を得られた。また、本研究の基本構想である水素そして電子の金属錯体で構成される界面を介した貯蔵・変換・輸送を、デバイスとして実現させるため、今年度は、界面での金属錯体形成における電子状態におよぼす影響、そして、それによるデバイス物性への効果を詳細に検討した。有機半導体/酸化物半導体界面における錯形成において、光電子分光法から、電荷の授受によるバンドベンディングが観測された。このことは、様々な方法を用いて構築された金属錯体の構造体をデバイス化する際に、各界面での分子レベルでのもうひとつの錯形成が非常に重要であり、それを含めた界面設計も必要である事を示すものである。
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