本研究では、100nm以下の厚みの液体膜に生じる分離圧を制御することで、水以外の液状物質の薄膜化ならびにナノ構造化を目指す。また、新規なナノ構造を有する自立膜の新しい設計手法を探究することを目的とし、このような自立膜の分離膜等への工学的な応用を検討する。 20年度は、泡膜の薄化により大面積の自立膜が形成される現象を利用して、様々な液状物質のナノ薄膜を作製し、ナノ材料としての特性を評価した。具体的には、ノニオン性界面活性剤の泡膜中にポリビニルアルコールやトリエタノールアミンなどの高沸点液体を導入し、泡膜を乾燥することで高分子ナノ薄膜を形成させた。ナノ薄膜の安定性は、ポリマーの濃度や高沸点化合物の濃度に依存し、特定の条件下では、数10平方センチメートルの泡膜から高分子ナノ薄膜を形成することが可能であった。高分子ナノ薄膜の組成は、NMR測定やFT-IRスペクトルから確認し、表面ならびに内部構造を走査電子顕微鏡観察により系統的に検討した。 さらに20年度は、界面活性剤を用いて薄化した高分子ナノ薄膜の安定性の目安を得るために、金属やカーボンなどの真空蒸着を行った。その結果、十分に乾燥させた高分子ナノ薄膜では、数10nm以上の無機薄膜を蒸着できることが明らかになった。この結果、粘性の低い高分子の水溶液から大面積の固体状自立膜を形成できることが分かった。
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