研究概要 |
任意のタイミングで遺伝子発現のON/OFFを制御できるシステムを構築するための遺伝子スイッチ候補分子として、ウレタン架橋構造またはメチレンアセタール架橋構造を核酸糖部に有する4'位修飾RNA誘導体を高度官能基化した新規刺激応答性人工核酸を設計した。 ウレタン架橋型RNA誘導体についてはその特性が未知であったため、高度官能基化に先立ちその特性を精査した。その結果、ウレタン架橋型RNAモノマーはその化学構造自身を制御する事が困難であり、速やかに別構造へと変化するため本研究には適さない事が明らかとなった。しかし、変化により生成する構造は全く新しく、オリゴマー化により新たな核酸系素材としての機能性を期待できる。 一方、メチレンアセタール架橋RNA誘導体は既に2',4'-BNA^<coc>として開発を進めており、高いRNA選択的親和性を明らかにしている。本研究ではこの2',4'-BNA^<coc>をニトロフェニル化することにより光感受性スイッチ化する事とし、その合成はD-グルコースを出発原料として14工程を経ることで達成した。鍵であるスイッチ化に関わる合成効率は、そのスイッチ化に関与しない官能基の保護基の選択が大きく影響し、核酸糖部構造を予め生成物,の立体構造に近い形に固定化できるシリル系保護基が有効である事を見いだした。合成した4'位修飾RNAモノマーの光感受性機能を、NMRおよびHPLCを分析手法として用いる事で詳細に評価したところ、僅か5秒間の紫外線照射により光感受性官能基化4'位修飾RNAモノマーは消失し、異なるRNA誘導体へと変化する事が分かった。 さらに、この新たに生成したRNA誘導体は、アミンなどの求核種で処理するとさらに異なるRNA誘導体へと変化する事を明らかとした。すなわち「光」と「求核種」による2段階スイッチとして機能する全く新しい機能性素材の開発に成功した。
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