研究課題
光による分子操作は、生体素材を標的にした分子観察において必須の手段である。分子を遠隔操作することにより、生体素材へのダメージを極力小さくすることができると同時に、結果を知りたい標的だけの分子観察を可能にする。特に、光照射により分子に取り付けられた「留め金」が外れ、分子が機能を示すようになる「光ケージド」系は、分子観察だけでなく生体分子の新たな制御法として世界的に注目されている。特に生体分子と相互作用することによって蛍光を示す蛍光色素に対して「光ケージド」系を応用することは、生体内の時空間的分子イメージングを容易にするに違いない。前年度の研究では、新規光ケージド系の設計のために、数種類の光ケージド系を考案しそれらの合成を試みた。その中で合成できた色素について、ケージ解除に必要な照射波長と反応量子効率の相関や分解生成物の同定などの反応の基盤に関わるデータを詳細に収集した。その結果に基づいて、本年度は引き続き、光ケージド蛍光ヌクレオチドを開発した。モノクロメーターを利用した単色光を照射して、各照射波長での反応量子収率を求めた。光開裂反応の反応条件(温度・時間・塩濃度・pHなど)が反応量子収率の増減にどれほど関与するかも検討し、それらのデータに基づいて光開裂反応の条件最適化を行った。光ケージド系の多色化については、生体素材の多色検出に有効であり、価値が高い。チアシアニン誘導体を含む種々の色素(できればメチン鎖を含む色素から選択)を用意し、同様の光ケージド系として機能することがわかった。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Org.Biomol.Chem. 8(3)
ページ: 546-551
Org.Biomol.Chem. 7(1)
ページ: 21-26
Angew.Chem., Int.Ed. 48(35)
ページ: 6480-6484