研究課題
有機エレクトロニクスの将来像の一つであるウェアラブルエレクトロニクスなどの電力源として、有機半導体や有機導体材料を用いた熱電変換素子を創出することを発展的目標とする。そのために、高い熱電変換特性が得られる有機材料をスクリーニングし、有機温度差発電素子のための基礎的な検討を行うことが本研究の主目的である。有機材料に特化したゼーベック係数と導電率の測定装置については最終的な改良を済ませ、複数の有機材料の比率を制御して共蒸着することができるようになった。今年度までに、この装置を用いて、不純物量が異なるものを含めて有機半導体薄膜6種、有機導体薄膜6種、モット絶縁体単結晶4種、有機半導体単結晶1種の熱電特性を評価した。これまでのところ、再現性のあるデータが得られている範囲では、典型的な導電性ポリマーであるPEDOT:PSSのうちで導電率の高い試料が最も良い熱電特性を示し、熱電性能の指標であるパワーファクターが3.3×10^<-8>W/K^2cm、室温におけるZT値が4.9×10^<-3>であった。これは目標とする値の数十分の1である。また、他の研究グループによる報告値も含めて有機半導体材料の熱電特性を評価・解析したところ、典型的な半導体材料を使う限りにおいてキャリアドーピング量を変化させても半導体の熱電効果理論を超えるものが見いだされておらず、その限界は目標には達しないと推測される結果となった。このことから、典型的な半導体材料ではないものに探索の重点を移すべきであると判断される。一方、まだ再現性には乏しいが、有機モット絶縁体の一種において、特定の条件下で10mV/Kを超える大きなゼーベック係数が得られた。今後、このようなエキゾチックな物性を示す材料を中心に探索してゆくべきであるという方針を得た。
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http://mole.te.chiba-u.jp