研究概要 |
本年度は分子コルセットとして無水マレイン酸を用いるモノマー合成を試みた。市販の2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンを原料とし、1)臭素付加ならびにN-ブロモスクシンイミドを用いたアリル位の臭素化による1,4-ジブロモ-2,3-ジブロモメチル-2-ブテンの合成、2)銅-亜鉛合金を用いた脱臭素による2,3-ジブロモメチル-1,3-ブタジエンへの誘導、3)無水マレイン酸との反応による分子コルセットの形成までを行った。1)のステップはほぼ文献どおりの収率で目的物が得られたが、反応時間ならびに試薬量を最適化するのに時間を要した。(収率56%) 2)のステップは文献では発ガン性の高いHMPAを溶媒を使用していたことから、この溶媒を用いない経路を探索し、THF/エーテル=1/9の組成でほぼ同程度の収率で目的物が得られることを見出した。この際、脱臭素剤である銅-亜鉛合金は一度に系中に加えるのではなく、1時間毎に5回に分けて添加したほうが収率は向上した。(収率40%)なお、溶媒系をNMP/エーテル=1/9とするとさらに反応率は向上するが、生成物からの溶媒の除去が困難となるため前述した溶媒系を用いることとした。 3)のステップでは過剰量の無水マレイン酸との反応を試みたが収率が低く(約30%)純度の低い生成物しか得られていないので、今後は精製が課題となる。Diels-Alder反応に効果的なルイス酸触媒の仕様も検討する必要有り。
|