研究概要 |
2,3-ビスブロモメチル1,3-ブタジエンと、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、フマロニトリル、アクリロニトリルをそれぞれDiels-Alder反応させて官能基を有するシクロヘキサン環を形成させ、さらに銅-亜鉛合金を用いて脱臭素することによりこれらの官能基を有する1,2-ジメチレンシクロヘキサン誘導体を合成し、ラジカル重合を試みた。AIBNを開始剤としてラジカル重合を行うと、アクリロニトリルから誘導したモノマーを除いていずれも1,4-シス型に対応するポリマーが得られたが、同一条件でも収率は大きく異なり、重合反応性に大きな違いが見られた。単結晶が得られた酸無水物型ならびにN-フェニルマレイミド型のモノマーでは、シクロヘキサン環が舟型コンホメーションをとり、ジエン骨格はほぼ平面上に位置しており共役性が明らかとなった。このことは紫外吸収スペクトルの最大吸光波長がs-cis型のジエンのものと一致することからも支持される。他のモノマーでは最大吸光波長は非平面型に捻れたジエン化合物のそれに近くなっていた。恐らくエステル基やニトリル基といった官能基がエカトリアルあるいはアキシアル位に位置しようとすることでシクロヘキサン環がイス型となり、ジエン骨格が平面から外れて共役性が低下したものと推定される。そしてこの共役性の違いが重合反応性に影響したと考えられる。
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