錯体重合法により層状リン酸ジルコニウム(ZrP)を合成することを目的として実験を行った。オキシ塩化ジルコニウム[ZrOCI2・8H20]、クエン酸(CA)、エチレングリコール(EG)に加え、リンのソースとしてホスホン酸[H3PO3]、リン酸[H3PO4、crystal]、リン酸二水素ナトリウム[NaH2PO4]をそれぞれ用いて前駆体である高分子ゲルを合成し、水熱反応による合成を試みた。仕込み比はZr:P:CA=1:2:3とし、反応温度は150度、反応時間は48時間の条件で行った。IR測定により前駆体の分析を行ったところ、脱プロトン化されたカルボキシル基由来による2つの吸収帯が観測されたことから、前駆体中においてZrイオンはCAにより錯化されていると考えられる。TG測定からも有機成分(CAおよびEG)の存在が確認された。水熱反応後、XRD分析より全ての試料においてブロードな回折線が観測され、試料は層状構造を持たないアモルファスZrPであると示された。また、CAのみを有機成分として実験を行った場合、ホスホン酸を用いた場合は反応後CA由来の回折線のみが観測され、結晶性のZrPの生成は認められなかった。リン酸二水素ナトリウムの場合は、反応後CAの回折線は観測されず、アモルファスZrP由来のブロードな回折線が観測された。一方、リン酸の場合は、反応後d=0.8[nm]の位置に回折線が観測された。α-ZrPの層間距離(d)が0.76[nm]であること、他の回折線の位置もα-ZrPに観測される主要な回折線の位置に一致していることから、α-ZrPが生成し始めていると考えられる。以上のことより、CA存在下での反応は有効であると考えられ、今後反応条件を変化させていくことにより、より結晶性の高い生成物が得られると思われる。
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