本研究課題では、有機高分子におけるミクロ相分離の概念を無機高分子へ展開するとともに、有機ケイ素化学の知見を融合し、ポリメチルヒドロシロキサンと有機高分子からなるブロックコポリマーを合成する。この高分子のミクロ相分離を利用することで、従来の界面活性剤の集合系からは得られない10-100nmの大孔径規則細孔の形成、構造制御を実現し、シリカ系ナノ多孔材料のスケールをナノからマイクロメートルに渡って全領域で制御する基盤技術を確立する。本年度は、加水分解により容易にSi-o-Siの架橋構造を作るSi-H基を側鎖に有するポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)系ブロックコポリマーをアニオン開環重合法により作成し、代表的な有機ポリマーであるpolystyrene(PS)と結合した分子量およそ10000〜30000、PMHS/PS=0.3/1〜3/1のPMHS-b-PSのブロックコポリマーを合成した。 PMHS-b-PS中のsi-H基は加水分解によりsi-OH基へ転換後、縮合させ、新たにシロキサン架橋構造を構築した。PMHS-b-PS、ヒドロキシ化PMHS-b-PSをシリコン基板にキャスト後、アニールもしくは風乾によりミクロ相分離を誘起させナノ構造体形成を試みた。どちらの試料でもTEM、HR-SEM観察より約20nmの比較的均一な細孔構造を有することが分かった。以上の結果より、数十nmの細孔を有するシリカ構造が、シロキサン-有機系ブロックコポリマーのミクロ相分離により構築できた。
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