研究概要 |
ポリオレフィンの一環としてアイソタクチックポリプロピレンを取り上げた。まず高温での紡糸を可能とするアタッチメントを従来の装置に組み込むことに成功し,予備実験の結果,良好に動作することを確認した。次いで,デカリンを溶媒として電界紡糸を試みたが十分な結果は得られなかった。そこでデカリンに対して導電性を付与する目的でイオン液体を添加した希薄溶液を用いると,高温加熱条件下で電界ゲル紡糸に成功した。紡糸後,高速回転コレクター上に繊維の採取を行った。その結果,イオン液体の添加量の増加に伴って繊維径が減少し,引き続いて延伸を施すことで高配列・高配向した繊維が得られることを見出した。2倍延伸後には直径が2μmまでの繊維が含まれており,今後紡糸条件,延伸条件の最適化を図ることにより,ナノ次元の直径を有するポリオレフィン・ナノ繊維が得られることが期待できる。繊維の構造と物性を検討した結果,同繊維中で高度に微結晶が配向していることを確認することができ,延伸に伴って弾性率と強度が上昇した。このように,本萌芽研究は当計画に従って順調に初年度を推移することができた。平成21年度は引き続き本研究を発展させ,高強度・高弾性率ポリプロピレン・ナノ繊維創製の精密化を図ると共に,同手法をポリエチレン・ナノ繊維,次いで超高分子最体へと展開する計画である。さらに,より微細化した繊維に対応するため,ナノ繊維について単繊維での構造と物性を的確に評価する手法の確立に取り組んでいく計画である。
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