研究実施計画にしたがい、平成20年に引き続き本年度は以下の研究を実施した。 (1)高面密度半導体自己組織化量子ドットの作製 平成20年度に引き続き、分子線エピタキシーの成長条件の検討により高面密度量子ドットの作製を行った。特に、ドット層の堆積膜厚とドット成長時の基板温度やアニール温度を変えることによるドット面密度の変化を調べた。その結果、ドット成長時の基板温度とアニール温度をともに下げた場合に比較的高い密度のドット構造が得られた。 (2)自己組織化量子ドットと希薄磁性半導体結合構造の作製 既に、希薄磁性半導体との結合構造を利用して、磁性半導体に光生成した電子・励起子スピンを量子ドット集合体の一部へと注入することに成功しているが、さらに、量子ドット集合体の特定位置にスピンを注入するため、電子ビームリソグラフィーにより磁性半導体層を微細加工し、特定のドット群にのみスピン注入を行う新規なナノ構造を作製した。 (3)自己組織化量子ドットへのスピン注入と量子ドット間スピン伝搬ダイナミクスの分光計測 エネルギー選択円偏光励起により、希薄磁性半導体と結合した特定の励起子エネルギーを持つドットへと光スピン注入を行った。さらに、円偏光を用いたピコ秒時間分解発光分光において発光エネルギーを弁別することにより、様々なエネルギーを持つ量子ドットへのスピン注入と注入後のドット間スピン伝搬ダイナミクスの実時間計測を行い、発光の減衰特性とその円偏光度の時間依存性よりスピン伝搬ダイナミクスとドット内スピン緩和時定数を取り込んだレート方程式解析を行い、注入されたスピンのドット間伝搬ダイナミクスを研究した。その結果、ドット間励起子移動時定数とドット内スピン緩和時定数を用いて実験結果を概ね再現することができた。
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