本研究では、従来、宇宙環境模擬実験装置として開発されてきたレーザーデトネーション型原子状酸素発生装置を小型の高強度極端紫外線・軟X線源として利用することを提案し、その基本的な特性評価を行うことを目標とするものである。これにより、現在デブリ問題で停滞するEUV光源開発に、宇宙技術をスピンオフすることで別の方向性からのアプローチを追加し、デブリフリーのガスパフ型EUV光源開発へのブレークスルーを与えることを目標とする。本申請では期間内に以下の3つの疑問に対する解答を得ることを目標とする。(1)原子状酸素を発生させている条件下で、レーザープラズマから発生している極端紫外線と軟X線のスペクトルはどのようになっているのか。(2)発光スペクトル・強度はレーザー照射条件やガスの種類にどのように依存するのか。(3)小型高強度極端紫外線源として、半導体リソグラフィー分野への適応性はあるのか。本年度は、昨年度の極端紫外フラットフィールド分光器整備に引き続き、酸素プラズマからのEUV領域(波長:5-30nm)の分光分析をリファレンスにArW用いて行った。その結果、宇宙環境シミュレーションで用いる原子状酸素ビーム発生時には25-40nm領域での多数の輝線スペクトルが観測され、同時測定した原子状酸素の飛行時間スペクトルと比較することにより、原子状酸素の並進エネルギーを増大させると極端紫外線発光強度も大きくなることが確認された。さらに、これらの輝線中にはイオンからの発光が確認され、酸素プラズマ生成時のイオン励起反応が極端紫外線発光強度に影響していることが示され、宇宙環境シミュレーターとしては最適動作条件の設定が極めてクリティカルであることが明らかになった。一方、半導体リソグラフィー光源として必要とされる13.8nmの発光は認められなかったことから、現状のレーザーパワーでは、その適用は困難であると結論付けられた。
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