本研究は、インクジェット印刷技術を用いて作製した多層人工構造によってテラヘルツ電磁波領域における三次元メタマテリアルを実現し、新たな機能光学素子の開拓を行うことを目的とする。初年度においては、インクジェットプリンティング技術を用いて作製した金属メタマテリアルが、確かに三次元的な効果を有する人工光学素子として旋光性を有することを実験的に示した。本年度においては、等方的な光学応答を実現するための、面内異方性の除去についての検討を進めた。インクジェット印刷技術の場合、ユニットセル内のパターンの書き順と、パターン全体の書く順番の両方が異方性に寄与してしまうことを見出し、その影響を最小化するためのインクジェット描画のプロシージャを検討した。これにしたがって実際に試料を作製し、THz偏光回転測定を行うことによって、確かに異方性の除去に効果的であることを実験的に示した。しかしながら、多層化した場合の位置ずれから生じる異方性は除去できておらず、これは今後の検討課題である。また、本年度は、このような三次元メタマテリアルの特性を、回路制御技術を用いて能動的に制御する手法についての検討、及び設計を行った。実際に産業利用されているシリコンプロセスを用いて、単位構造毎にトランジスタを組み込んだ多層金属メタマテリアル構造を設計し、試作を進めている。この試作の結果をふまえ、本研究で検討した有機トランジスタを用いたインクジェットプリンティング技術との融合について検討を進め、三次元アクティブメタマテリアルの実現に関しても検討を進めている。
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