ウエット光学という液体を固体光学素子表面に固定し、その自由境界面を利用して、高出カレーザー応用に適した新しい光学系を作る目的で、まず、固体光学素子の表面状態の濡れ性の制御を実験的に行った。具体的には、石英ガラスでつくられた1μm程度の直径の多数の空孔を持つフォトニッククリスタルファイバで、その毛細管現象による液体の引き込み度合いを前処理過程を変化させて評価した。 液体としては、ガラスとほぼ同等の屈折率を持つシリコンオイルを用い、洗浄液には、EPグレードのイソプロピルアルコールを用い、キャピラリー内に吸引・排出する方法を繰り返すことで行った。この吸排出を手動(吸入排出圧にばらつきがある状態)で行った場合は、洗浄後の液滴レンズの付着確率には大きなばらつきがあった。この原因としては、吸引する高さ、排出圧力、加圧時間が一定でないと、汚染表面を通った洗浄液が洗浄表面を通過することで再汚染されることがあり、それによる撥油効果のばらつきであると考えられた。そこで、洗浄プロセスを定圧で、排出時間も一定にできるように自動洗浄システムを構築しその清浄性を評価した。その結果、排出圧4気圧、100回/1時間程度の吸排出速度により、安定に洗浄が行われ、清浄面がキャピラリー内壁に確保できることがわかった。 次に、この清浄面に撥水処理させる長さの最適化を行った。長い撥油コーティングのために大量に撥油剤を毛細管内に吸引してしまうと、排出が不完全になりやすく、安定な撥油面が得にくい。現状で、数μmの空孔径の毛細管では、撥油剤の吸引長さを5mm以上にすると、排出圧4気圧では、十分な撥油剤排出が行われず、内部残留があるために、安定な液滴レンズ生成が困難になることが明らかになった。これにより、数μmの毛細管径を持つ光学素子へのウエット、光学素子付着に関する前処理技術が確立できた。
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