高出力レーザーに使用される光学素子では、常に光学損傷による制限を受けつつ、使用されているものが多い.一般に、光学素子は、損傷しきい値の数倍下でしか動作させることができない。しかし、近年の超短パルスレーザーの発展にともない、非線形光学現象が広範囲で利用されるにつれ、可能な限りの高い強度での使用、破壊時の取り替えといった過程で研究が進んでいるものも多くの研究で見られている。本研究が提案するウエット光学では、液体の持つ自己形状修復機能を利用して、表面保護と同時に再生可能な光学素子であるが、ウエット部の液体とその基板となる固体素子との屈折率差を小さくし、さらに液体の付加形状を、照射時に高い強度となる点を固体-液体境界面からずらす設計を行うことで、およそ1桁程度の破壊しきい値の増加と、破壊しきい値近傍までの自己修復機能を確認した。また、表面張力と重力による液体表面の不安定性を利用した液滴サイズの均一化をウエット光学素子に応用することで、基板上に同径のレンズ列を高密度に作成することが可能であることが分かった。さらに、テフロンの撥水性を紫外レーザーで制御することで、配列した液滴レンズ系を作成する原理実証実験に成功した。これらは、今後、平面に均一な液滴レンズ列を作成し、高い照射強度下で波面分割を行い、高効率で波長変換をさせる素子や、ファイバーバンドルなどに自動球心で高強度なレーザー光を入射できる新しい光学素子の実現に応用されるものとなる。
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