研究概要 |
アニーリング法(SA)の探索特性とガラス形成物質の諸特性とのアナロジーに注目し,SAとその周辺技法の探索特性に関わる経験則の裏づけ,成功要因の解明を図る実験的解析を,種々の巡回セールスマン問題を対象に実施した.以下,主たる知見を列記する.これらは,SAとその周辺技法を含めた局所探索法の設計根拠の明確化に資するものである. 1.これまで予備限定的に行ってきたSAの探索特性評価にかかる3種類の実験一適応的冷却スケジュールを用いたパラメトリックスタディ;評価関数がつくる景観上のベイスン間遷移過程の観察;特定温度付近の探索を重点化する冷却スケジュールを用いたパラメトリックスタディーを,より広範囲の問題例を対象に実施した.最適化に影響力をもっ温度が存在し,デボラ数(=緩和時間/観察時間)が1程度になるガラス転移相当温度として特徴づけられることを確認した。 2.SAに対する優位性が主張されていた一般化SAに対し,(温度変化ではなく)受理確率変化を等しくする冷却スケジュールを用いた比較実験ならびに検証実験を行った.付加パラメータ(q)の導入による受理判定基準の一般化が,有限時間のSAに対する改善の本質的要因であるとは認め難いこと,一般化においても,ガラス転移相当領域における探索による改善が見込まれることがわかった。 3.温度サイクリング実験において,ガラス転移相当領域への昇温をともなうサイクリングの,最適化における有効性が認められた。このことは,レプリカ交換モンテカルロ法(温度並列SA)を用いた最適化における,セプリカごとの温度履歴においても,傾向として観察された.これらの知見から,非単調温度スケジュールを用いたSAの改善における,ガラスの安定化現象とのアナロジーの有効性が示唆される。
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