研究概要 |
本研究では,金属に対するナノ・マイクロ引っかきによって生じる掘起し(塑性盛上り)による極微小隆起細線パターンをナノ電極リソグラフィー用の電極として利用する方法を提案するため,ナノ電極の創成とそれを用いたナノ電極リソグラフィー実験を試みる.本手法によれば,比較的簡便な機械加工法である引っかきにより,比較的高精度でかつ切りくずを生じずに,半導体回路用マスとクレスエッチングパターン製作のためのナノ電極の製造が見込める.H21年度は,以下の内容について検討し,それぞれ以下に示す成果を得た. (1)電極の面積の拡大を図るべく,精密旋盤による高速マイクロ・ナノ引っかき実験を無酸素銅の円板試料に対して実施し,数百nm~数μmのレベルの掘起しがほぼ安定的に創成できること,および加工速度を変化させることによって掘起し高さが制御できることを明らかにした.さらに,引っかき速度が低下するにつれて,掘起し形状・寸法が安定することを明らかにした.ただし,引っかき溝の両縁に均等な高さの掘起しを創成するまでには至らなかった. (2)ナノ電極リソグラフィー用ユニットとシリコン系スピンコート樹脂を活用して,数十~数百nmオーダの般差を施したCMG(化学作用援用研削)により準備した高平坦な単結晶シリコン試験片(5mm角,ピコ秒レーザにて溝創成し割断)に対し,上述の微小引っかきによって得られた電極を用いて,局所陽極酸化実験を行ない,所どころに高さ2~3nmの隆起状の局所陽極酸化パターンが創成できることを確認した.ただし,より平坦な電極試料の準備が重要となることも課題として明らかになった.
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