本年度は、2光波暗号をベースとして光学的しきい値秘密分散法を実現する上で、最も重要な特性となるシェアの組み合わせ依存性について調査した。安定したセキュリティ性能を確保するためには、復号時の出力強度がシェアの組み合わせには依存しない処理が必要である。まず、記録媒質にフォトポリマーを用いて2通りのシェアの組み合わせ方に対する出力データと出力光強度を実験的に測定した。その結果、出力光強度はシェアの組み合わせよりも暗号鍵と復号鍵との適合率に大きく依存することを初めて明らかにした。次に、さらに安定したセキュリティを確保するためには、入出力データ間の相関値も調査する必要があるため、数値解析によって、2光波暗号における出力強度と入出力データ間の相関値がシェアの組み合わせ方には依らないことを明らかにした。本解析においては、ホログラム記録媒体として厚さ500ミクロンのフォトポリマーを想定し、記録媒体内での伝搬計算には高速フーリエ変換ビーム伝搬法(FFT-BPM)、記録媒体の外側の自由空間伝搬計算にはスカラー回折理論を用いた。復号過程において、復号鍵に用いるシェア数Nを0~10に変化させ、各Nの復号鍵をシェアの異なる組み合わせ方に従ってそれぞれ作成し、回折効率、相関値を観測した。シェアの組み合わせを変化させたいずれの場合にもNに対する回折効率はN+1と比べて低く、N-1と比べて高くなっていることを確認できた。また、異なるシェアの組み合わせにおける入出力画像間の相関値は、Nの広い範囲にわたりほぼ同値を示した。これらの結果からも明らかなように回折効率と画像相関値はシェアの組み合わせにはほとんど依存せず、シェア数に依存することがわかった。以上の特性は、2光波暗号をベースとした光学的しきい値秘密分散法を実現する上で、必要不可欠なものである。
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