研究課題
画像の符号化では近傍の画素間に存在する高い相関を利用しており、MPEG等の国際標準映像符号化方式においても、予測符号化による対象信号電力の削減とその予測残差信号に対する直交変換処理による所要表現情報量の削減という、画素間の高相関性を利用した2種類の操作を組み合わせて用いている。しかし既存の標準符号化方式においては、予測符号化部分の処理では、それまでに既に符号化された画素の値を用いて以降の符号化処理に当たるという「因果的符号化」の考え方に依拠するものしか用いられてこなかった。このために、従来の符号化方式では、謂わば時間的に見て「過去」の符号化結果との相関しか利用しておらず、近傍全ての画素の内の片側半分の情報しか符号化に用い得ていないという越えがたい限界があった。本課題では、非因果的符号化方式、つまり今後符号化対象となる画素との相関をも織り込んで利用した符号化方式が可能で有ること、及びその実現方法を明らかにする。平成21年度においては第1の成果として、内挿予測符号化をH.264等の既存標準方式におけるIピクチャ符号化部分の代替目的に資するために、帰還差分処理とそれに続くブロック単位のDCT処理とのハイブリッド符号化方式の構成法として、両者を独立且つ従属的に行なうタンデム方式と、両処理を一括して一つの行列演算の形式で実現するユニファイド方式を提案し、後者構成法の優位性を明らかにした。第2の成果として、この構成に基づく内挿予測符号化をH.264等の既存標準符号化方式におけるIピクチャ符号化部分の代替目的に資する方式の可能性を示した。その実現のためには、ローパスフィルタ処理に相当するような伝送信号の間引き処理や量子化器制御方式が必要となるが、その実現方法を理論的に明らかにし、提案方式が従来方式より符号効率を高め得ることを、実画像を対象に用いた実験を行ないその効果を明らかにした。
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映像情報メディア学会誌:映像情報メディア Vol.63,No.11
ページ: 1652-1658