電子常磁性共鳴イメージング法の解像度を格段に改善するため、繰返しデコンボリューション法を適用した画像処理プログラムを開発した。解像度改善の程度を定量的に調べるために、エッジレスポンスを測定する模擬試料を用意した。スーパーレゾリューション法の適用前と後でのエッジレスポンスを比較し、解像度を定量化した。実験で使用した模擬試料(DPPH)では、電子常磁性共鳴スペクトルの吸収線幅が広いため、思うような解像度改善が実現されなかった。 また、ギ酸リチウムの粉末に放射線を照射した試料についても解像度の改善を試みた。スーパーレゾリューション法による解像度改善を試みたが、円盤状の試料において平坦な分布を再現することが難しく、山なりの画像強度を示すことが分かった。解像度が低いということの他に、信号強度を変化する理由が別にあると考えられる。 DPPH、ギ酸リチウムともに、電子常磁性共鳴の吸収スペクトルが広く、高解像度化に不向きな試料である。そのため、スペクトルの広がりを少なくする処理を行った後、画像を再構成し解像度を比較した。一定の改善は見られたが、格段の改善にはつながらなかった。吸収スペクトルの処理と画像再構成の処理の二段階において、高解像度化を達成する新たな方策が必要であることが分かった。 本研究で開発しているソフトウエアは、繰返し処理を多用するため計算時間が多くたる。計算時間を短縮するため自動並列化による高速化を検討した。並列計算は実行されたものの、プロセッサ数に比例した高速化は実現できなかった。このことから、コンパイラによる自動並列化では不十分であり、高速化を実現するプログラムの記述法の検討が必須であるという結論に至った。
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