平成20年度の研究目的は、超過洪水に対する堤防決壊の危険性を縦断的に明らかにすることであり、そのために、河川堤防の歴史的変遷、築堤の経緯・実態を明らかにした上で、多様な外力(洪水)に対する堤防決壊の可能性を物理的(土質力学的)・水理学的に解析し、それぞれの洪水に対してどの地点で堤防が決壊・越水する危険性が高いかを評価した。 具体的な得られた知見は以下の通りである。 ・利根川水系において昭和からこれまでの約80年問に堤防決壊した箇所を全て整理し図示した。 ・利根川水系では越水による堤防決壊が最も多く、その他に樋管等の堤防を横断する構造物周りの漏水に起因する堤防決壊と一般堤防部分での漏水に起因する堤防決壊があることが明らかになった。 ・利根川本川を対象とした水理解析により、超過洪水の際に堤防越水が起こる可能性が高い区間を示した。 ・利根川水系の氾濫原における被害ポテンシャル(資産分布、人口分布)を明らかにし、今後行う予定である氾濫解析と統合することにより、流域治水マネジメントを検討することが可能となった。 さらに、2008年11月21日に都内において開催した「河川堤防のシステム管理に関する国際シンポジウム(International Symposium on Design and Management of Levee System)」ではオランダ、ハンガリー、中国から講師を招聘し、各国の河川堤防の計画・管理について比較分析・議論を行った。 その結果としてまとめた内容は本年度の成果として論文・学会等で報告する予定である。
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