強震動予測手法では想定する断層モデルが与えられていれば、地震動時刻歴波形を評価することができる手法である。しかし、想定する断層パラメタの値によって評価結果である地震動は大きく変わってしまうという問題点があった。この問題点に対しては理学的な背景から断層モデル・断層パラメタを一意に決定するというシナリオ型強震動予測手法が行われてきたが、このような手法では断層の決定論的シナリオという仕様が前提となった地震荷重しか評価できず、耐震性能に応じた地震荷重を評価することはできなかった。そこで、本論文では工学的な耐震性能から設計用断層パラメタを決定する手法を提案する事を目的としている。具体的には、本論文において強震動予測手法に対して応答曲面法ならびに拡張1次近似2次モーメント信頼性法(AFOSM)が強震動予測手法に初めて適用され、これによって断層パラメタをPGAやSaなどの荷重レベル(性能水準)から断層パラメタを決定することが可能となった。具体的な研究結果として、レベル2地震動(再現期間2500年)に対し、地震の生起確率50年10%のケースでは、信頼性指標β=0.84、PGA=273(gal)、Sa(0.1)=544(gal)に対応する設計用断層モデル評価した。また、地震の生起確率50年50%、レベル2地震動に対応する設計用断層モデルから、PGA=545(gal)、Sa(0.1)=1102(gal)という設計用地震動が作成された。このように、著者はこれまでシナリオという仕様によって決定された強震動予測手法を、性能によって断層モデルを規定できる性能規定型強震動予測手法へと改良することに成功している。
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