健康な男子大学生12名を被験者として実験を行った。被験者はそれぞれ8:30に指定の朝食を実験施設内で採り、9:30から実験前室で実験準備を行い始め、その後10:30から16:30までの6時間を湿度・気圧の調整された部屋で過ごした。水分の摂取は90分おきに3回、計400ml行った。測定項目は生理値として皮膚温(7点)、皮膚性状(皮膚水分量・経皮水分蒸散量等)、目の乾燥の指標としてまばたき回数、血液性状、不感蒸摂量等、主観値として空気の感じや乾燥感(目・鼻・顔・喉)、自覚症しらべ等について尋ねた。環境条件は実験前室が室温25℃、RH50%とし、実験室は室温25℃、湿度が60%・10%の2条件、気圧が101.3kPa(以下N-○)・高度2000m相当の78.6kPa(以下L-○)の2条件のその組み合わせの4条件とした。経皮水分蒸散量は、RH10%条件が有意に高く、長時間暴露による回復が見られることはなかった。こういった低湿度環境における水分蒸散量の増加は、気化熱による熱放散を促し、前額、手背、足背など末端部の皮膚温低下を誘発した。血液粘度はRH60%条件では実験前後で血液粘度が低下したのに対してRH10%条件では血液粘度が上昇し、L-10%条件に関しては、有意に値が上昇する傾向が見られた。これは、低圧・低湿度環境による不感蒸泄量の増加に起因すると考えられる。最も高値であった実験終了時のL-60%条件においても、その値は4.0±0.3mPa・sと、正常値の範囲内であったが、本実験では暴露中に400mlの水分摂取と食事に伴う水分摂取があったためであると考えられ、低圧・低湿度環境下での水分摂取の重要性も示された。
|