本課題では、火災及び地震を想定して、出火室のように被害性の現象が直接発生した室以外の病室から避難せずとも人命安全を確保できるようにする技術及び基本設計手法の研究開発を目標としている。 平成20年度は、火災について、病室・ナースステーション・倉庫と、火災性状及び周囲諸室との開口部の接続形態が質的に異なる室を出火室とした場合に(出火室以外の)病室の遮煙及び間仕切り壁を介しての過度の伝熱防止を達成する設計計画的条件、煙制御手法並びに壁厚をゾーンモデルによるシミュレーション及び壁体内伝熱の数値計算で明らかにした。 病棟に関する最近の一般的な平面計画の考え方に大きく影響を与えることなく、加圧給気量も現実的な範囲で、出火室以外の病室の遮煙を達成できることを示し、煙制御については、設計法の比較的詳細まで指針を明らかにした。火災については、平成20年度の研究で、本課題で想定していた範囲の成果に、ほぼ達している。この成果は、平成21年度日本建築学会大会で、「災害時避難不要病棟構築に向けた基礎的研究」として発表する(投稿、発表決定済み)。 地震については、病棟の構造を免震等とした上で、医療継続を可能とするための電源・水等の確保が必要で、その計画には、各種医療器具の調査が必要である。実際の病棟を対象とする調査には倫理委員会の審査が必要となり、2008年度は、調査対象病院の選定と倫理審査を考慮のうえ調査項目の病院との折衝・調整を行ない、倫理審査で終了した。この結果をうけ、調査は、病棟の防災体制・管理実態を含め、2009年度に実施することとなった。
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