本研究は、第1に、研究代表者が実際に関わっている、鶴岡、花巻、柏崎、鳥取におけるまちづくり市民事業において、広い意味での社会的企業を核にした多様はフォーメーションを実現する参与研究、第2に、実務家も含めた「市民事業研究会」における我が国の多様な事例の分析と評価、第3に、これらの成果を踏まえた6月の「まちづくり市民事業が拓く世界」と題したシンポジウムでの討論、第4に、イタリアにおける社会的企業(社会的協同組合)を核にした「住宅・地域まちづくり事業」の展開実態に関する現地調査、によって遂行した。第1に関しては、すべての関与している事業が、完成されたものから構想段階のものまで、様々であるがすべてにおいて、本研究が仮定している社会的企業を核にしたまちづくり市民事業というスキームで前進しており、多様な類型の評価が可能になっている。第2の研究会における検討の結果、まちづくり市民事業を核としたスキームモデルを5つに類型化することができ、地域特性との関係を分析した。第3のシンポジウムでは、より広く市民事業に取り組んでいる専門家のプレゼンテーションと意見交換により、まちづくり市民事業を核とした施策統合の可能性が明らかになった。第4のイタリアにおける現地調査においては、2つの住宅都市開発協同組合グループと、環境に関わる社会的協同組合の調査により、具体的な社会的企業の事業展開、相互の連携とそれから生み出される先進的総合的課題解決のスキーム、およびその大きな可能性を解明することができた。 これらの成果により、本研究が仮定しているビジョンが、現実の施策と事業として展開する可能性を明らかにできた。
|