研究課題/領域番号 |
20656101
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研究種目 |
萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森永 正彦 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50126950)
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研究分担者 |
湯川 宏 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50293676)
吉野 正人 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教 (10397466)
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キーワード | 金属酸化物 / 電子構造 / 材料設計 / 結晶構造 / 相変態 / 化学結合 / 原子化エネルギー / 凝集エネルギー |
研究概要 |
多様な物性を示す金属酸化物の化学結合を、エネルギースケールで初めて表現し、「金属酸化物の原子化エネルギー図」を作成する。それを基に量子材料設計の新しい展開を図ることが本研究の目的である。平成20年度において、主に多価数・電子状態、結晶構造、相変態の3点に対象を絞り研究を行い、次の成果を得ている。 1. 約30種の2成分系および3成分系酸化物の計算を行い、金属酸化物の原子化エネルギー図を作成した。図の縦軸は酸化物イオンの原子化エネルギーΔEo、横軸が金属イオンの原子化エネルギーΔE_Mである。ただし、原子化エネルギーは、以下の式で定義され、この値が大きいほどその原子の化学結合への寄与は大きい。 定義:原子化エネルギー=(孤立中性原子のエネルギー)-(酸化物中の原子のエルギー密度) 2. 多くの遷移金属酸化物において、ΔEoはΔE_Mより大きく、酸化物イオンの結合への寄与が大きい。 3. 原子化エネルギー図上で、化学結合が似ている酸化物は近くにあり、異なる酸化物は遠くにある。例えば、ペロブスカイト型酸化物BaTiO_3(=BaO・TiO_2)の位置は、BaOよりもTiO_2の近くにある。BaTiO_3は主に、TiO_2の化学結合を引き継いでいることが分かる。 4. クロム酸化物において、CrO_3(+6価)、CrO_2(+4価)、Cr_2O_3(+3価)、CrO(+2価)の順に、ΔEoは減少し、ΔE_Mは増加する傾向がある。 5. 多くの金属酸化物の結晶構造単位は、MO_4四面体、MO_6八面体である(M:金属イオン、O:酸化物イオン)。それらが、頂点、辺、あるいは面を共有して、酸化物の構造ができあがっている。鉄酸化物の場合、面共有の時、酸化物イオンは最も不安定である。 6. ペロブスカイト型酸化物MgSiO_3は、超高温、超高圧下でポストペロブスカイト型に相変態する。このとき、SiO_6八面体が頂点のみならず辺をも共有して、Si-Oイオン間距離をできるだけ長く保つようにしている。
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