研究概要 |
本研究は,転位や界面のような一次元もしくは二次元ナノ格子欠陥に捕捉された「究極の軽元素」である水素の空間分布を,透過電子顕微鏡(TEM)に付随する分析技術を応用して高空間分解能で可視化する汎用的な手法開発の試みである.20年度に得た成果は以下の通りである:(1)水素雰囲気中でのメカニカルミリングによって作製された水素化ナノ構造黒鉛における低温側の水素熱脱離ピークに対応する水素捕捉状態をFTIR、電子回折、電子エネルギー損失分光(EELS)及び第一原理電子論計算によって明らかにした。水素原子が黒鉛基底面の中心に緩やかに結合しているモデルによって、実験結果のすべてが無理なく説明できることがわかった。(2)新しい水素貯蔵材料であるAlH_3の分解過程及び大気中で安定に存在するメカニズムを透過電子顕微鏡(TEM)及びEELSによって明らかにした。この材料の水素放出によって金属アルミニウムナノ結晶集合体へ分解する過程をTEM内その場観察によって追跡した。また3-5nmの非晶質アルミナ表面層の存在を示し、大気中で比較的安定でありかつ分解過程で粉末粒子の形状が変化しない理由を明らかにした。(3)水素イオン照射でタングステン表面に形成されるブリスターの構造解析、内部ガス圧の評価を行った。核融合第一壁候補剤であるタングステンの表面ブリスターを非破壊で構造解析する低角度入射電子顕微鏡法を超高圧電子顕微鏡に応用して、ブリスター内部の構造を明らかにし、更に有限要素法によるシミュレーションと併用して内部ガス圧を評価することに成功した。
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