研究概要 |
多孔質材料は断熱材として広く用いられており、その有効熱伝導率の推算式は古くから多数提案されている。通常、有効熱伝導率は気孔率に正比例して直線的に減少することが知られている。しかし、100nmオーダーの微細閉気孔を導入したナノ多孔質ZnOでは気孔率が10%程度でも有効熱伝導率は最大30%程度低下することを予備的実験から見出している。そこで本年度は、ZnO系酸化物のナノ多孔質化により、導電率に比べて熱伝導率をより効果的に低減できる可能性に着目し、ナノ閉気孔構造を実験的に形成して熱伝導率との関係を詳細に検討した。母相はすべてZnOに2mol%のアルミニウムをドープしたZn0.98Al0.02O(ZnAlO)で、所定量の酸化亜鉛とγ-アルミナを混合した原料粉体に空孔形成材料として平均粒径が150,425nmのポリメタクリル酸メチル粒子を3〜10wt%の濃度で添加し、今回初めての試みとして非イオン性界面活性剤のTriton X-100を添加し、遊星ボールミルを用いて湿式混合した。風乾後、一軸成形、等方静水圧成形ののち、窒素雰囲気下、1400℃で5時間焼結した。 PMMA添加試料の熱伝導率は全温度域で効果的に低減されており、室温においては気孔率が10%未満の試料でも最大34%低下した。また、PMMAの添加によって全温度域にわたってゼーベック係数の絶対値が有意に増大した。これは実用上重要なことであり、今後この機構を検討していきたい。PMMAの添加を5wt%以下に抑えた試料については導電率の低下が小さく、熱電性能の安定した向上がみられた。 このように、ZnAlOにナノサイズのPMMA粒子と分散剤として界面活性剤を添加したところ、熱伝導率を効果的に低減することができた。また、PMMAを添加した試料では、ゼーベック係数の絶対値が有意に増大し、性能の大幅な向上につながった。今後、これらの機構解明を進める。
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