資源的問題のある希土類元素を使用しない強力硬磁石を創製するために、磁歪および磁歪拘束による磁気異方性発現に着目した。微視力学的材料設計-複合材料化により弾性異方性を制御すれば、これにより巨大磁気異方性が発現できる可能性がある。例えば、単純計算からはひずみ量10^<-4>の磁歪拘束ができれば5〜10MJ/m^3程度の磁気異方性エネルギーとなり、これは現在最強の磁石であるNd-Fe-B系磁石と同様の巨大磁気異方性である。この発想を発展させるため、本研究では強磁性元素Ni、磁歪の大きいCoFe204、および、実用上ほぼ最大の磁歪を有するTerfenol-Dを強磁性体として選択し、磁場拘束のための高ヤング率材料としてCu-W一方向繊維強化材を用い、サンドイッチ接合により複合材料を作製し、その磁気特性を振動試料型磁力計で計測すると共に、一次元に楕円体モデルを適応した非線形型磁化曲線および磁気ひずみ曲線の構成方程式を考案し、実際の磁気ひずみとモデル解析とを比較した。特に、Terfenol-Dを用いた場合には無磁化場および飽和磁化場での接合を行った。理論的解析から、磁性体の磁気ひずみ量と磁気ひずみ勾配が複合材料における磁気異方性向上に大きく影響することを見出した。また、Terfenol-Dを用いた複合材料の実験値では計算結果より大きな磁気弾性効果が発現した。飽和磁化状態の時に接合したコンポジットの実験結果と計算結果は一致せず、消磁状態で接合したコンポジットでは計算結果が定性的に一致した。このことから、飽和磁化での接合では実験的な問題があるかあるいは理論式の改善が必要であることが指摘された。および、理論からは、初期に予想した巨大磁気異方性エネルギーの発現は、現存する材料の物性値からは困難であることが示唆されたが、期待より小さいものの複合材料化で磁気異方性は向上できることを示した。
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