サファイア基板上ではあるが、金属TiN膜上でのGaN膜成長機構について論文にまとめ、発行された。鏡面のGaN膜を金属TiN膜上で成膜するには、成長初期にGaN核生成を促進する必要があり、そのプロセス条件の一つとしてTiN膜の膜厚が重要である。約5nm厚で最も表面が平坦なGaN膜が得られ、それ以上の膜厚減少(2nmまで)では最終的に平坦なGaN膜が得られなかった。これは、成長初期にTiN膜をGaN島であまり覆えなくなったためである(核生成頻度が小)。また、5nm厚以上のTiN膜と2nm厚TiN膜上のGaN膜内部の転位組織は全く異なり、内部応力が異なっていることを示唆している。従って、GaN成長初期にGaNの核生成頻度を増加させるには、微細粒による核生成場所の増加と、膜厚減少による膜内の歪エネルギー増加によるTiN膜上でのGaN島の濡れ性増加が必須である。 また、上記のGaN成長機構解明を踏まえて、TiN膜上での厚膜GaN成長と、TiN膜の選択溶解性を用いた厚膜GaNの剥離技術を確立し、学会にて発表した。GaN膜は、まずMOCVD法により約10μmを、続いてHVPE法にて数μmを成長させた。TiN膜の選択溶解は、厚膜GaNを成長した試料を、硝酸をベースとした酸に浸漬することにより行った。TiN膜の溶解を促進するには、100nm程度のTiN膜厚が必要である。100nm厚のTiN膜のため、AlN膜を挟むことによりGaN膜の品質向上および酸溶解への影響を調べた。GaN膜の品質はそれほど向上せず、AlがTiN側へ溶解し酸溶解への耐性が増加し、選択溶解が困難になった。
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