研究概要 |
耐酸化合金上に形成する成長速度の速い準安定Al_2O_3スケールから保護性に優れた安定α-Al_2O_3への相変態促進を目的としてご相変態に及ぼす種々の陽イオン、陰イオンの影響を水溶液の噴霧法を用いて検討した。 実験では、塩酸系、硫酸系、水酸化物塩から作製した水溶液を用いた。これら水溶液を噴霧したFe-50at%Al合金試料では、水酸化物塩系ではAl_2O_3スケールの相変態促進効果が認められたが、水溶液と金属表面とのぬれ性が悪く、均一なコーティングが得られない'ことがわかった。一方、塩酸系、硫酸系塩から出発した水溶液では、塩化物イオンまたは硫酸イオンにより合金試料の腐食が生じ、求める効果が得られないことがわかった。 そこで、次年度の予定である金属単独コーティング法によるα-Al_2O_3への相変態促進機構の解明を前倒しで実施し、これまでに以下のメカニズムを提案している。 1)Fe, Cr, Tiに代表されるコーティングでは、コーティング元素の酸化物は、α-Al_2O_3と同じM_2O_3タイプのコランダム構造を有し、この酸化スケールが酸化初期(3min以内)に合金表面に数10nmの厚さで形成する事がわかった。酸化時間の経過とともに、これら酸化スケール中のAl濃度が上昇し、固溶限に達すると、α-Al_2O_3スケールが析出して形成した。(すなわち、酸化初期に準安定Al_2O_3相は形成せず、α-Al_2O_3スケールは析出することにより直接形成する。) 2)Niに代表されるコーティングでは、キュービック構造の酸化物を形成するため、α-Al_2O_3が直接析出できず、相変態の促進効果が全く無いことがわかった。さらに、このような金属コーティングでは、Al_2O_3との複合酸化物(たとえばNiAl_2O_4(キュービック構造))を形成し、それがコランダム構造の形成を抑制するため、相変態を著しく遅延することが明らかとたった。
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