太陽電池用シリコン薄膜を安価かつ大量に製造するためには、電析法によるシリコン薄膜形成が有望である。本研究では、申請者が開発した中低温イオン液体であるZnC12-NaCl-KCl系(使用温度200-250℃)やZnC12-EMPyrCl系(使用温度100-200℃)を電解質として用い、高品質なアモルファスシリコン薄膜を電析させることを目的としている。平成20年度は、シリコン源としてSiCl4を用いて実際にシリコン電析が可能であることの確認実験を行った。実験温度が200-250℃の場合は、ZnCl2-NaCl-KCl系を、実験温度が100-200℃の場合は、ZnCl2-EMPyrCl系を主に使用した。なお、EMPyrClはN-ethyl-N-methylpyrrolidinium chlorideの略である。まず、種々の組成のZnCl2-NaCl-KCl系およびZnC12-EMPyrCl系イオン液体中へのSiC14溶解度を調べるたところ、ZnCl2-EMPyrCl系(ZnC12:EMPyrCl=50:50および40:60mol%)が有望であることが分かった。そこで、作用極にニッケル板、対極にはグラッシーカーボンロッド、参照極には亜鉛線を用い、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、ヒーターにより浴温を150℃に保持してサイクリックボルタンメトリーを行った。その結果、ブランク状態と比較してSiC14添加後に、SiCl4の還元と考えられるカソード電流の増加が見られた。定電位電解によりサンプルを作成し、XPS、SEM、EDXにより分析した結果、シリコンが電析されたことが示唆された。さらに、150℃において気体であるSiCl4を連続的に作用極であるニッケル板の近傍に供給する新たな電解セルを開発し、これを用いることでニッケル板前面にシリコンを電析させることが可能となった。
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