本研究では、マイクロ部材用の超軽量・高強度・高触媒機能性等を有する新金属材料として、金属系ナノポーラスマテリアルの開発を目標とする。本研究で取り扱うNi-Wナノ結晶電析合金は、Ni含有量を増加させると、4000GPaに迫る超高引張強度を示しつつ、加工硬化を伴う塑性変形の発現を確認している。透過電子顕微鏡観察によると、W含有量が20at.%以上になると、ほぼ全面にアモルファス構造を示すが、Ni含有量の増加とともに、サブミクロンレベルの粒組織が見られるようになり、その界面部分は、厚さ20〜30nm程度のNiが高濃度に偏析したナノ界面組織の形成が見られ、そのサブミクロン粒子内部は、数ナノメータサイズのナノ結晶粒子の集合体構造となるメゾスケールの網目状偏析構造が形成されることが明らかとなった。このような、メゾスケールの網目状偏析構造の形成により、軟質のNi-richナノ界面層が変形パスとして作用し、引張塑性変形能と加工硬化性能を発現させると推定している。このメゾスケールの網目状偏析構造を意図的に残留させ、サブミクロン粒子内部をナノポーラス化することにより、超軽量、高強度、高延性材料の実現が可能であると考えられた。本Ni-W合金は、硫酸等の酸化性酸に対して高い耐食性を示すが、この原因としてW原子の存在による不働態皮膜の形成が考えられる。一方、W酸化皮膜はアルカリ雰囲気に容易に優先的に溶解することが明らかとなっている。次年度は、これらの耐食性の差を利用してナノポーラス構造を有する超軽量合金の実現を目指す。
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